今回は特別企画「中国文学哲学としての易経三百八十四爻」です。占いではない哲学としての「易経」のお話です。カテゴリーは「易経三百八十四爻」になります。
今回は「風澤中孚（ふうたくちゅうふ）」三爻です。
卦辞は「豚魚 吉 利渉大川 利貞」とんぎょにしてきちなり たいせんをわたるによろし ただしきによろし。です。
「豚魚」？
「海の豚」はイルカ、「河の豚」はフグ、ですね。「江豚」はスナメリです。スナメリはイルカに似た魚ですが、風に向かっていく魚と言われていまして、下卦の「兌」の一番上の口が、上卦の「巽」要するに風、の方を向いているということです。
これは、お互いに信頼しあっている、惹きあっているイメージでもあります。
「下卦」の「兌」喜び、「三女」が「上卦」の「巽」従う、「長女」の様に成長するイメージもありますね。
そして「豚魚之信」という言葉がありますが、「豚魚」は心の鈍い人たちを指し、その「豚魚」でさえ感動させる徳があることを意味します。
いろいろあるね。
そして「風澤中孚」の卦は「舟」の形でもあります。
どういう意味なの？
「風澤中孚」は「上卦」が「木（巽）」で「下卦」が「沢（兌）」ですから、舟が浮かんでいるイメージでもあります。
それで「大川をわたるによろし」なんだね。
昔から中国では王朝が舟なら民衆が水であると言います、要するに噛み合ってこそ大川を渡れますし、水が荒れれば船は転覆してしまいます。
そして「豚魚」「豚」と「魚」はよくある贈り物も意味します、贈り物の内容より信義、気持ちがあれば、喜ばれる、感動してもらえる、という意もあります。
こういったことから「孚（まこと）」が通じる、と言うのが「風澤中孚」のテーマとも言えます。
「三爻」は「得敵 或鼓或罷 或泣或歌」てきをえて あるいはこしあるいはやみ あるいはなき あるいはうたう。
どういう感じなの？
様々な経験をしている、とも言えるし、定まらないことを指しているとも言えます。
なるほど、景気よく攻めたり、止めたり、泣いたり、喜んだり、青春だなー、って感じもするし、ハッキリしろ、って感じもするね。
まあ、人は経験を積むことも必要で簡単に正解や間違いで分けられないですよね。
ただ、「陽位」に「陰」ですから、位、不正、力不足の感もあり、焦りのようなものも感じますし、だからこそ、四苦八苦して挑戦してるとも言えますね。
だから「吉」やら「凶」やらは書いていません。
なるほどねー。易のことばは注意深く書かれてるんだね。
そうです、ただ上の「四爻」には比せず、下の「二爻」に比しています。「五爻」に駆け付ける「四爻」には簡単になれず、尊位の「五爻」と声だけでもつながりたい「二爻」に比しています。（隣の爻と陰陽が違う場合、比している、つながっています。）
やっぱり、先に進みがたい感じなんだね。
しかし「上爻」に応じています、「上爻」は「翰音登于天 貞凶」かんおんてんにのぼる ただしけれどきょう。です。高い志があるとも言えますが、中身が伴っていなければ美しい言葉もむなしいばかりです。その中身を充実させるには大きな困難がある、だから「貞凶」正しくとも凶、なのです。
正しいからこそ、凶とも言えるのか。
そこに応じてるってことは、「三爻」では、今の気持ち、志を問われてるのかな。
比していない「四爻」にたどり着く強い気持ちと実力が問われていますし、「三爻」では不正でしたが、「四爻」は「陰位」に「陰」で位、正しいですからね。謙虚さ、孚（まこと）を問われているのです。
うーん、易の「六線形」は簡単なようですごい物語が織り込まれてるんだね。
そういうことです。
出典は「易経」でした。
