今回は愛多憎生(あいたぞうせい)です。
受けた愛情や恩が強すぎると、第三者からの憎しみに転じるので良くない。と言うことです。
まんまだね、カンタンだよね。
ただ、この言葉は中国の道教の言葉です、道教は老子の系統ですから、注意深く見る必要があります。こうも読めます、愛情が強すぎると、憎しみに転じるので良くない、
愛情が強すぎると良くないよ、って言葉でしょ?同じじゃない?
そうなんですが、「愛情や恩を受けすぎると、第三者の妬みや恨みを受けるので良くない」とだけ解説しているものが多いんです。
?…違うの?
仏教では、強すぎる愛は、執着であるので、独占欲や束縛する心は、憎しみを生みやすいので注意しなさい、と言う考え方があります。道教では、愛と言うのは容易に言葉に出来ない難しい概念と言えますので、このような意味も含んでいると考えられます。過保護的な愛や自己中心的な愛を注意する意味です。
愛情や恩を受けすぎると、第三者から妬まれる、憎まれるから良くない、と言う解説は、強すぎる愛自体ではなく、周りの妬みに注意せよ、と言う意味になります。こちらの愛はカンタンで、みんなが思う、物質的な優しさや親切のような愛、の意味でしょう。
ちょっと西洋的な趣だね。
そうなんですよね、辞書を書いているのは現代人だから西洋的な解説になるし、判りやすいと言えますね。
じゃあ、どっちが正しいの?
とりあえずは、「愛情や恩を受けすぎると、第三者の妬みや恨みを受けるので良くない」と覚えておけばいいでしょう、辞書などにもこちらしか出ていないのが普通ですから。
西洋の「愛」と、東洋の「愛」と言う考え方は難しいね。
ま、現代は単純さが重要視されますし、言葉の意味も簡素化されやすいですね。ただ、儒教、道教の研究と言う側面では、それでは書き手の真意を失いやすい、と言っておきましょう。
出典は「亢倉子」でした。